海外旅行に行くにおいて気をつけたいことの一つが、罰金だ。
私が単身でイタリアに滞在していた際にやらかしてしまった話を、己への戒めも込めてここに記録しようと思う。
イタリアへの旅行者に対して注意喚起されがちなことの一つとして、電車のチケットへの打刻があげられる(ちなみにイタリア語では打刻することをTimbrareという)。
イタリアの国鉄では、電車のチケットを窓口や販売機で購入した後、駅構内にある打刻記にチケットを通して打刻しないといけない(地下鉄は違って、日本みたいに改札があるのでその必要はない)。たまにやってくる駅員さんのチケット抜き打ちチェックの際に、チケットにこの打刻がないと50ユーロ以上の高額罰金が取られてしまう。※オンラインで購入した電子チケットの場合は打刻は不要。
これはもうよく知られたことで、「イタリア 電車 乗り方」みたいに検索をすると、色々なサイトで必ずと言って良いほど書かれている情報だ。私が大学一年生の頃に受けたイタリア語の授業の中でも、先生が同じような話をしてくれた。そう、当然私も知っていたのである。
なので、私も罰金は取られるまいと毎回打刻をしていた。もしくは、Webサイトであらかじめ電子チケットを購入していた。駅員さんのチェックは本当にたま~~にしか来なかったが、毎回ちゃんと提示をしてパスしていた。(駅員さんは毎回サムズアップをしてくれる気がする。)
しかし、慢心とは恐ろしいものである。
滞在から数週間経ち、電車に乗るのにも慣れてきたころにこういうことは起こるのだ!
イタリアの滞在も残すところあと数日となった日、私はヴェネツィアからミラノの電車に乗っていた。もう慣れたもので、早さよりも安さを重視した満員電車の中でボケッと車窓を眺めていた。ちなみにイタリアの電車の窓、きったなくて初日びっくりした。日本の電車の窓がきれいすぎるだけなのか??
因みにこの日もどこかの停車駅で電車が20分くらい停まり、結果20分くらいの遅れが生じていた。向かいに座っていた女性が音声メッセージに文句を吹き込む。
ミラノまであと一駅。はやくつかないかなあ、なんて思っていると、駅員さんがチケットの抜き打ちチェックにやってきた。
ドキ、とした。
このときに限って私は、打刻をしていなかったのである!!スーツケースをはじめ旅行の大荷物をすべて持っていた状態(さらにリュックが壊れたので手持ちのかばんでなんとかやっていた状態)かつ、チケットを買ってから発車時刻まで時間が無かったこともあり、「まあ大丈夫かな??」なんて思って打刻をせずに乗ったのであった。
でも、私ちゃんとチケット買ったよ?チケットに乗車駅、降車駅、日付、時刻ぜんぶ書いてあるよ?無賃乗車をしていないことは明確だよね?それに(毎度チェックが来るわけではないので)全然打刻をせずに乗っていた友人もいるくらいで、他にもそんな人いるし大丈夫なんじゃないの??…と願うように思った。が…
背後から、「身分証を見せなさい!」と大きな声が聞こえた。私の後ろにいた女の子たち2人が打刻をしておらず、罰金をとられていたのだ。
心臓がバクバクした。「あ、私もだ・・・」と。ミラノまであと5分ほど、いまミラノに着いてくれたらさっさと降りて逃げられるのに!(※ダメです)なんて願いも虚しく、駅員さんがこちらへやってくる。「なんとかならんかな~打刻の穴ちっさいしごまかせんかな~~」と思って恐る恐る見せるものの…
「パスポートを見せなさい。君のチケットには打刻がない。」
駅員さんの、威圧感のある大声が響き渡る。この車両違反者3人目やぞ。無念。
言葉が分からない何も知らない観光客を装ってみるか?などこの期に及んでずるいことをかんがえるも、駅員さんは変わらず鋭い眼光をこちらに向ける!!!
それならばいっそ事情を全部説明して、許してもらえないかと思いダメ元で説明してみると…
「イタリアが語わかるんだ?じゃあ私の言ってることもわかるよね?君は罰金を払うんだよ。さっきの女の子達と一緒。カードも使えるから言い逃れは出来ないよ。」
ダメで元々。あかんかった…………あとカードまで使えるんかい!!!
この時私はショックよりも、「あ、本当にとられるんだな」と感心した。そう、謎のバイアスがかかっていたのである。
観光客だからといって容赦も御慈悲もない。満席の車内で、周りの人達の「あのひと外国人だから分かってなかったんだろうな~」の視線をあびながら、私はクレジットカードを(すげ~威圧感のある大声の)駅員のおっちゃんに差し出した。
56ユーロ!たっっっかい!!!前日にパスタショック事件があった私だが、この罰金ショックはそれを上回るものとなった。
※パスタショックのはなし
イタリアで電車に乗る際は、打刻を忘れないようにしよう。怖い人は、あらかじめ電子チケットを買っておこう。
とはいえ、きちんとチケットに乗車駅、降車駅、日付、時刻が明記されているにもかかわらず、なぜ打刻を忘れただけで56ユーロもとられなきゃならないんだ?と納得がいかない。たとえばこれが、「乗車駅と降車駅だけが指定されていて、乗る日時は乗客の自由」とかだったら納得いくのだが…
イタリア人の友達にこの話をすると、「ちゃんとチケットを買って見せたのにどうして罰金を取るんだ?スタッフはおかしいよ!」と私より怒ってくれた。やさしい…。
罰金を取られた時は本当に最悪の気分だったけれど、その友達のおかげでちょっと救われたのだった。
おわり